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公開に寄せて ― Renewsでやりたいこと

井上 理
@osamu

2020.07.09

 

課題まみれニッポン。だからこそ

 

 社会課題にまみれた“課題先進国”の日本。東京一極集中や少子高齢化、教育レベルの低下といった、長年指摘されてきた課題の深刻度が増す中、国としての勢いやチカラの衰えも顕著になっています。

 

 スイスに本拠を構える世界トップクラスのビジネススクール、IMDが毎年発表する「世界競争力ランキング」において日本は、6月16日に発表された2020年版で34位と、前年の30位をさらに下回りました。同ランキングが始まった1989年から92年まで、日本は4年連続で1位でしたが、その栄光は見る影もありません。

 

 そこに、新型コロナウイルスが襲いかかり、人々の不安や不満は増すばかり。SNSはその捌け口となっているかのように誹謗中傷や罵詈雑言で溢れ、対立や分断も進み、平易に表現すれば「余裕のないギスギスとした社会」へと向かっていっているような気がします。

 

 しかし、悲嘆に暮れていても、「あれが駄目、これも駄目」だと批判や課題の指摘だけをしていても、状況は改善しません。いまこそ、好転に向けた具体的な解決策が必要とされている。「こうしようぜ!」「あそこの、これって良くない?」という、前向きで建設的なアイデアのシェアがどれだけできるかに、日本再興の命運がかかっている。

 

 だからこそ、課題解決にこだわったメディア「Renews(リニューズ)」を皆さんに使ってほしい。そんな思いをさらに強くしています。

 

信念、そして専門的な論拠や論理

 

 Renewsという名前には、「世の中をリニューする(新しくする・更新する)アイデアの集合体でありたい」という思いや願いを込めました。

 

 私たちが目指すのは、世の中に良いことをしている人や組織が正当に評価される社会。その実現を少しでも後押しするために、社会に良いインパクトをもたらす「ヒト・モノ・コト」に関するコンテンツ発信に集中します。

 

 また、Renewsではコンテンツの担い手を「リニュアー(新しくする人)」と呼び、広く募ります。書く能力、コンテンツを作る能力はさほど問いません。重要視しているのは、世の中を良くしたいという「信念や情熱」、解決に向けた具体的な「アイデアや提案」、専門性に基づいた「ファクトやエビデンス(根拠)、ロジック(論理)」。どんな人であろうと、これらの要素を持ち合わせた“専門家”に、リニュアーとして参画してもらうことを期待しています。

 

 「ソーシャルグッド=NPO・NGO」といったイメージもありますが、本来は「社会に良いインパクトを与える事業や活動、組織や人」を示す総称。私たちは、すべてのコンテンツにおいて、広義のソーシャルグッドを応援していきます。そして、なぜそれが世の中や社会にとって良いのか、どう良くなるのかを示すメッセージや根拠を、明快に打ち出します。

 

何に対する「課題」を解決したいのか

 

 「世の中や社会に良いインパクトをもたらす」という言葉には、含みがあります。そこには、「日本」がふたたび競争力のある、希望にあふれた国になる、という願いも込めています。「ノブレス・オブリージュ」という言葉があるように、立場ある者が社会全体の利益に貢献する義務がある、という文化が、世界の健全な発展を支えてきました。

 

 困窮した会社は自社の利益しか目に入らなくなるのは当然です。社員の生活がかかっています。困窮した人は、他者を思いやることなどできません。自分が生きていくことに精一杯です。結果、負のスパイラルを招きます。それが、いまの日本なのではないでしょうか。

 

 つまり、日本人が、日本企業が豊かにならなければ、より良い社会など到来するはずがありません。いわゆる一般的な社会課題と、経済や競争力の課題は、両輪で解決していかなければなりません。ですから私たちは、「社会課題の解決」と「日本の競争力の向上」の両立をゴールとします。加えて、国連が打ち出した「SDGsの達成」にもつながれば、なお良しです。

 

 この3つに立ちはだかる「課題」を解決していく必要があり、そのためのメッセージや提案、アイデアにフォーカスしていく所存です。

 

 また、それらの課題を解決する上で有効な施策を、いくつかの「アジェンダ(議題)」に分類して議論を深めていきます。「共生社会」「地方創生」「教育改革」「ウェルネス」「イノベーション」といった区分を設け、バランスよく取り組んでいくつもりです。この整理が完璧などとは思っていません。適宜、議題の区分は変えていくつもりです。

 

 なぜ、そのメッセージや提案が「グッド」だと判断できるのか。疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。確かに、本当に正解かどうかは、時が経ち、実証されない限り判然としません。さらに、貧困や差別といった課題を一気に解決へと導く万能薬など存在しないことも自明です。だからといって、臆していては前進しません。

 

 ごく小さな範囲の改善であっても、ごく小さな一歩であっても、そのメッセージに、その提案に、そのヒト・モノ・コトに、信念や専門的な論理があれば、次々と紹介していこうと思っています。

 

 それらの組み合わせや総和が、次なるアクションを生んでくれたら、またそれを紹介する。いつしか、大きなムーブメント、大きな改善につながったらいいと考え、地道に、ドキュメントやストーリー、提言といったコンテンツを積んでいく所存です。

 

ゼロイチではなく、主従で判断

 

 「良い世の中」「社会を良くする」という言葉の定義は人それぞれでしょう。また、どんな人にも、どんな事業にもソーシャルグッドな要素は含まれます。ゼロイチで切り分けられることではありません。

 

 しかし、自分(自社)の利益と、社会全体の利益、どちらを優先した事象なのか。「主従」で判断することはある程度、可能だと考えています。Renewsでは、なるべく社会全体の利益を優先しているであろうヒト・モノ・コトにフォーカスしていきたい、と考えています。

 

 誤解してほしくないのですが、当然のことながら個人や個社の「利益」を否定しているわけでも、利益優先のヒト・モノ・コトを批判しているわけでもありません。利益なくして資本主義は成立しません。いくらソーシャルグッドであっても利益がなければ持続可能とはならず、インパクトももたらさないでしょう。綺麗事だけで世の中は動きません。

 

 また、仮に他者や社会のことは鑑みないとしても、自分(自社)の利益を優先することは否定されるべきことではありません。それを否定していては経済が回りません。一時期の成長や発展も阻害します。しかし、長年の取材活動を通じて、あるいは、昨今の風潮を鑑みるに、社会全体の利益を優先するヒト・モノ・コトの存在感が薄いことについて、問題であると思っていました。

 

拡がる影響力や露出の格差

 

 SNS全盛の時代となり、初期の勢いが優勝劣敗を決めることが多くなってきました。熱狂的な信者を対象とした新手の情報ビジネスも勃興しました。いち早く“ハック”した者が勝ち、勝った者同士が影響力を融通し合うことで、互いに勝ち続ける、という循環も生まれています。

 

 ハックという言葉は「コンピューターに不正侵入する」という負の意味を纏うようになりましたが、元来は「エンジニアがコンピューターのプログラムを(上手く)書く」という意味。転じて、「高度な技術や知識を用いて上手くやり抜く」こと全般を指すようになりました。

 

 この「高度な技術や知識」を、「何のために」生かし、「どう」上手くやるか。自分(自社)の利益を最優先に、強烈な勢いをもってやるのか。世のため人のために、社会全体に光をもたらす手法でやるのか。

 

 前者に懸念はありません。もう上手くやっています。既存メディアの多くも前者に光を当て、視聴率などの数字を稼いでくれる心強いコンテンツとして、連携したり頼ったりしています。

 

 一方で心配なのは後者。得てして、社会課題の解決に真剣に取り組む方々や組織は、自らのアピールを不得手としています。自分の利益や虚栄心、承認欲求をさておき、他者を思いやることを優先するからです。それに、得てして、派手ではありません。数字を稼ぐような話ではありません。有名な企業、有名人が数字を稼ぐのは当たり前です。

 

 必然と、前者と後者の影響力や露出の格差は拡がるばかり。であれば、後者を主とするメディアがあっても良いのではないか。世の中や社会に光をもたらすヒト・モノ・コトに、もっとフィーチャーし、ドライブさせるようなことに集中するメディアがあってもいいじゃないか――。

 

 これが、Renewsという新しいことを始めた最大のモチベーションです。

 

記者キャリアの内省

 

 1999年から記者という仕事を始めて約20年。自分自身の内省も、Renewsのヒントとなりました。

 

 私は幸運にも、IT・インターネット革命がもたらす社会変革を最前線でウォッチし続けることができました。駆け出しの当時、まだインターネット産業やネット企業というのは経済の中で亜流であり、ネット革命を専門とする先輩記者もさほどおらず、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で4年間どっぷりとインターネットに浸かっていた私は、結果として、早い時期から仕事に恵まれました。

 

 ITやインターネットによって社会や生活が次々と進化することに興奮を覚え、変化自体が社会にとって良いことだ、変革を早めることが社会への貢献である、と信じ、その旗手たるベンチャーや起業家に張り付き、ダイナミズムを伝えてきました。

 

 無論、社会変革は良いことばかりをもたらすわけではありません。必ず、弊害や予期せぬ副作用、歪みや軋轢も生じます。

 

 例えば、馬車から自動車の文化へと変化すれば、便利になる一方で、事故が増え、公害などの課題も生じます。馬車の組合も反目します。しかし、時の流れには逆らえません。保険を充実させたり、ルールを定めたり、クルマの安全性を高めたりして、乗り越えれば良いのです。実際、そうして社会は発展を続けてきました。

 

 この20年、ITやインターネットによる社会変革においても、似たようなことが幾度も起きました。私は記者として、変革を後押ししつつも、「社会との折り合い」は必要であるとの見地に立ち、世の中や社会が良い方向へ進んでくれたらという思いで、ソーシャルゲームの「コンプガチャ問題」に切り込む、といった記事も書いてきました。

 

 しかし、変革の時代は20年も続き、インターネットやITは特異なものではなく、人々や社会に必需のインフラとなりました。猪突猛進に変革の必要性を伝えてきましたが、もうそんな時代ではありません。次なる変革や、変革の陰に隠れ、ずっとそこにある課題など、伝えるべきことはほかにもたくさんある、と思うようになっていきました。

 

 加えて、基本的にすべての仕事において「世のため人のため」であろうと心がけてきたつもりですが、本当にすべてがそうか、と問われれば、違うと答えざるを得ません。

 

制約を課し、意識を高め、自制する

 

 世のため人のためになるか、良いか悪いかは、よく分からない。が、少なくとも読者に関心をもって読んでもらえるだろう。自分が得意な領域だから、やってみよう。出張に行けるからやろう。「仕事」だからやるか……。正直に吐露すれば、そんな気持ちで挑んだものも中にはありました。

 

 しかし、「我々はこういうメディアです」と自ら掲げれば、自ずと「振り切る」ことにつながります。これだけ多種多様なメディアがある中で、わざわざ新しいメディアを作った最大の理由は、ここにあります。徹底的に振り切ってやってみたかったのです。

 

 ソーシャルグッドなヒト・モノ・コトにフィーチャーするという制約を自らに課し、対外的に宣言すれば、否応でも意識が高まり、例えば、小手先で手っ取り早くページビューを稼ごう、などとはしない自制心が働き、結果として、ちゃんと振り切ることができる。

 

 そうした考えに賛同くださる方々に恵まれ、偶然も重なり、いまのRenewsとなりました。

 

諦めるまで失敗ではない

 

 詳細な経緯については別の機会に譲り、割愛しますが、ここまで準備を重ねる過程で、紆余曲折という言葉では言い表せないような想定外の出来事が次々と起き、計画よりだいぶ遅れてしまいました。それはそれは、超“不格好”なプロセスであり、反省しかありません。

 

 ただ、諦めるまで失敗ではないと思っていますし、今後の展開が楽しみでなりません。世の中や社会のために良い影響をもたらした個人や組織がちゃんと世間から評価され、貢献に応じた正当な対価をきちんと得られるような社会が訪れるよう、努力し続けようと思います。

 

 よちよち歩きの「小さなメディア」です。至らないところだらけです。大きなメディアになろうとは思いませんが、社会に資する存在にはなりたいと思います。共感してくださる方々のご支援にかかっています。何らかのかたちで「手伝ってやるよ」と思ってくださる方がおりましたら、ご連絡をいただけると幸いです。これから、どうぞよろしくお願いいたします。

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